「みんな忙しく動いているのに、なぜか一番大事な仕事が終わっていない……」
プロジェクトを推進するリーダーなら、一度はこのような背筋が凍るような経験をしたことがあるのではないでしょうか。個々のメンバーは真面目に、一生懸命に働いている。サボっている者など一人もいない。それなのに、チームとしての成果が致命的に遅れてしまう。
この現象の原因は、スキルの不足でもやる気の欠如でもありません。作業が「輻輳(ふくそう)」したときに、「根本的な優先度」の認識がメンバー間でバラバラになっていたことにあります。
今回は、具体的な事例をもとに、輻輳する現場でいかにして優先度を共有し、チームの出力を最大化するかについて考えてみます。
また、朝会の話題の1つとしてもいかがでしょうか?
1. 現場で起きていた「優先度の食い違い」という悲劇
あるチームの事例を見てみましょう。そのチームには、今週中に完了させるべき3つのタスク(①、②、③)がありました。本来の優先順位は、納期と重要度の観点から「タスク③ > タスク① > タスク②」でした。
しかし、リーダーが明確な優先順位を「共通認識」として徹底できていなかった結果、現場では以下のような状況が発生してしまいました。
- Aさん: 責任感が強く、自分の担当である「タスク①」に関連する作業に没頭。タスク③の存在は知っていたが、まずは目の前の①を終わらせるべきだと判断。
- Bさん: タスク③の担当。しかし、それがチーム最優先事項であるという危機感が薄く、マイペースに(のんびりと)作業を進めていた。結果、週の後半になっても終わる気配がない。
- Cさん: 「何から手をつければいいか」の指示が曖昧だったため、比較的手をつけやすい「タスク②」をコツコツと実施。
結果はどうなったでしょうか。
本来、全員が意識を向けていれば数日で完了していたはずの「最優先事項:タスク③」が、週明けになっても終わっていないという最悪の状況に陥ったのです。
本来、全員が意識を向けていれば数日で完了していたはずの「最優先事項:タスク③」が、週明けになっても終わっていないという最悪の状況に陥ったのです。
AさんもCさんも「仕事はしていた」のです。しかし、チーム全体で見れば、その努力は「今、注力すべき場所」に注がれていませんでした。
2. なぜ「輻輳」すると判断を誤るのか
作業が「輻輳」する、つまり複数の案件が1箇所に集まり、混み合っている状態では、人間の視野は驚くほど狭くなります。
- 「やりやすい仕事」に逃げてしまう:
複数のタスクが積み上がると、脳は無意識にストレスを避けようとします。その結果、重要度に関わらず「慣れている作業」や「すぐに終わる作業」を優先してしまう傾向があります(Cさんのケース)。 - 「自分の持ち場」に固執してしまう:
真面目な人ほど、「自分の担当分を穴埋めしてはいけない」という責任感から、全体最適よりも部分最適を優先します(Aさんのケース)。 - 危機の温度差:
リーダーの頭の中にある「これだけは絶対に落とせない」という危機感が、メンバーに100%の熱量で伝わっていることは稀です。言葉で「優先して」と言うだけでは、Bさんのように「自分のペースでいいだろう」と解釈される隙を与えてしまいます。
3. 事前に「タスク③ > ① > ②」と宣言することの重み
今回の失敗を防ぐために必要だったのは、作業が本格化する前に「タスク③ > タスク① > タスク②という順序で、関わる作業はすべて優先して実施してほしい」という明確な合意形成です。
単に「どれも大事だけど、特に③をよろしく」という伝え方では不十分です。輻輳状態を突破するためには、以下の3つのレベルで共有を行うべきでした。
① 「順序」の絶対化
「どれも大事」は、現場では「どれからやってもいい」と同義です。数字を使って「1番はこれ、2番はこれ」と序列を確定させることで、メンバーの迷いを排除できます。
② 「全員参加」の意識付け
「タスク③はBさんの担当」という括りを外す必要があります。「タスク③を終わらせるために、AさんもCさんも、自分の作業(①や②)を止めてでもサポートに回る可能性がある」というルールを事前に共有しておくのです。
③ 「進捗の可視化」と「即時修正」
朝会や共有チャットで、「今、チーム全員の力はタスク③に何%割かれているか?」を問い続ける必要があります。Bさんの進捗が遅れていることが火曜日の時点で分かれば、すぐにAさんのリソースを③に投入するという判断が下せたはずです。
4. 輻輳を解消する「リーダーの伝え方」3ステップ
今後、同じような状況を繰り返さないために、ブログ読者の皆さんに推奨したいアクションが3つあります。
- 「やらないこと」を決める勇気:
優先度を共有する際は、上位のものを伝えるだけでなく、「この作業(今回で言えば②)は、③が終わるまで手をつけなくていい」と明言してください。これがメンバーの心理的負担を減らし、集中力を生みます。 - 依存関係を説く:
「なぜ③が最優先なのか」の理由を共有します。「③が遅れると、クライアントの信頼を失う」「③が終わらないと、来週の工程すべてがストップする」といった、後続への影響を伝えると、メンバーの主体性が変わります。 - 「助けを求める」ことを推奨する:
Bさんのように作業が遅れているメンバーが、「遅れています、誰か手伝ってください」と言いやすい環境を作ること。また、Aさんのように自分の作業に没頭している人に「今は①を止めて③に入って」と指示を出すことは、リーダーの重要な役割です。
結びに:チームの力は「ベクトル」で決まる
物理学の世界では、力は「大きさ」だけでなく「向き」を持っており、それをベクトルと呼びます。
どんなに個々のメンバーが大きな力(作業量)を持っていても、その向き(優先度)がバラバラであれば、合算されたチームの力は小さくなってしまいます。逆に、全員のベクトルの向きが「タスク③」という一点に揃ったとき、チームは予想以上のスピードで困難な壁を突破できるのです。
「言わなくてもわかっているだろう」は、輻輳する現場では通用しません。
「タスク③ > ① > ②。この順序が、私たちの今日の正義です」
「タスク③ > ① > ②。この順序が、私たちの今日の正義です」
それくらい明確なメッセージを、今日からチームに発信してみませんか?


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